第1部　三章【護りのミサト！】その1　第十話　TUIKA

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第十話　TUIKA

　次の日以降も2人は『アクア靖国』に行ってゴールデンコンビことカネダトキオ&カネコミカゲと対局した。待ち合わせをしていたわけではないが行くと大体どちらか1人と同卓になった。（稼働卓数が少ないのでそれは偶然というよりは自然なこと）

　新宿最強と言われる相手を前に怯まず臆さず闘うこと、それはユキには良い経験になったしミサトにも自信を付ける結果となった。つまり、2人は打ち勝ったのである。

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　ある夜。今夜はゴールデンコンビは仕事が忙しい曜日だからどちらも来ないと聞いていたのでミサトたちも麻雀をしないで新宿ゴールデン街という場所に行ってみることにした。

「どんな所なのかしら、楽しみね」

「ミサトは強いなあ、私はまだ新宿は怖いんだけど。まして知らない飲み屋？　に行くなんて」

「あの2人が経営してる店なんだから知らないっていっても少し安心じゃない？」

「まあ、そうだけど。お店の名前なんて言ったっけ」

「百万石よ。ローカルルールの役満ね」

「ひゃくまんごく……どういう役なのそれ」

「上の方のマンズの清一色（チンイツ）で数字合計を100以上にしたらいいの」

「ひぇ！　難しそー！」

　そんな話をしながら歩いていたらゴールデン街に到着した。

　そこは非常にレトロな店ばかりだった、まるでここだけ昭和の時代かのようだ。

「あった！　あれだ！」

　百万石は細い階段を登った先にあった。テーブル席２つとカウンター席6つしかない小さな店だった。

「こんばんはー」

「あー！　あなたたち。いらっしゃいませ！　来てくれてありがとう」ミカゲは麻雀中とは別人のように明るく接客してくれた。

「よう、お二人さんよく来たね。まあそこ座って。今日は思ったよりひまだから麻雀談義でもして楽しもうじゃないか」とトキオがミサトたちをテーブル席に案内してくれる。すると……　ある違和感。

「トキオさん、胸」

「まあ、ご覧の通りだ。本名は金田朱鷺子（カネダトキコ）なんだよ。いい年したカップルが結婚してないのには何らかの理由があるってこった」

「通りで美しいと思った」

「危なく惚れるところだったわよ」とユキが言う。

「惚れてくれる分には構わないよ？」

「コラ！　トキ！」

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　1時間くらい経っただろうか、トキオはたくさん麻雀の話をしてくれた。ミサトもユキも麻雀の話なら途切れることなくネタがあった。あーでもないこーでもないと夢中で話しているうちに来客が多くなってきたのでここらでミサトたちは帰ることとした。

「じゃあ、また」と店を出ようとすると「あっ、待って！」とミカゲが小走りで寄ってきた。

「これ」

　名刺だった。

【麻雀真剣師団体TUIKA】

1期生　金子水景

「麻雀真剣師団体ツイカ（まーじゃんしんけんしだんたいついか）。そんなのがあったんだ……」

「出来たばかりの新団体よ！　トキオもそこに所属してる1期生。裏に私の連絡先書いてあるからいつでも連絡してね」

「えっ、いいの？」

「わたしたちもう友達だと思ってたんだけど、違った？」

「…んーん、友達で、間違いないね。あれだけ牌で会話したらもう友情みたいなのはあるわ」

「だよね、ありがとう。トキも誘ってたまにはセットで遊びましょう」

「それ、いいね！」

　こうして、ミサトとユキは新宿最強のコンビと好敵手という名の友人になって新宿エリアを後にしたのだった。